顕微鏡 第45巻▶第4号 2010
■特集:微生物をめぐる最近の知見

凍結置換法と連続切片法による酵母のストラクトーム解析

山口正視,岡田仁a,b,並木侑一

千葉大学・真菌医学研究センター
認定NPO法人 綜合画像研究支援

要旨:細胞の微細形態は,電子顕微鏡観察をはじめとした,これまでの多くの研究によって明らかにされ,すべてが解明されているかのような印象がもたれている.しかし,細胞あたりのリボソームの数や,小胞体の数や細胞内分布など,細胞構造の定量的,三次元的解析はほとんどなされていなかった.われわれは,structureと-omeを組み合わせて,「ストラクトーム」という新語を造り,電子顕微鏡レベルにおける細胞の定量的,三次元的全構造情報を意味する新しい概念として提唱した.本稿では,酵母エキソフィアラ・デルマチチジスを材料として,凍結置換法と連続超薄切片法によりストラクトーム解析を行い,1個の細胞にリボソームは約20万個存在すること,ミトコンドリアは17~52個存在し,体積の10パーセントを占めること,小胞体は5~10個存在し,体積はわずか0.2パーセントを占めるにすぎないことなどを明らかにした.

キーワード:ストラクトーム,酵母,凍結置換法,連続超薄切片法,三次元再構築

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